1)基本、生徒に厳しいロシア人先生

6月前半に続き、毎朝8:30から授業は続く。
この時期、私は相変わらず授業でロシア人先生が喋る内容をほとんど聞き取れていなかった。

他の生徒は母国の大学でロシア語学科に居たとか、ロシア語を数年学んできたとか、
基本的なロシア語についての知識がある生徒がほとんどだった。
外地で言葉が分からず取り残される気持ちはとても辛かった。

しかし、ロシア人先生は容赦なくロシア語を私に浴びせかける。
多分こう言う内容を言っていたと思う。

先生:ノリユキ!何でもいいから喋れ!
先生:ノリユキ!分かってるか分かっていないか答えろ!
先生:ノリユキ!お前は何をしにここに来たんだ!

私は毎日、ロシア人先生にほとんど罵倒に近いレベルで怒られていた。
そして、私はこう思っていた。
「よく映画でロシア人を描いているシーンは、ほとんど罵倒が多かった。あれは本当だったなぁ。。」

でも、罵倒されたくらいで日本に帰る気は当初から生じなかった。
結果としてロシア教育メソッドの上で、この「先生の𠮟咤激励」はとても有効な心理的影響を与えると、私は考えている。
ロシアでは「教育はサービスではない」のである。
教育は神聖な訓練でありお金儲けの道具ではないという意識が、ロシアには存在していると感じた。

だから授業のことを「Занятия(ザニャーチヤ)」と呼んでいる。
日本語では「課業」と意訳すると近い感覚になると思う。課業とは義務に近い感覚になる。
だから先生は非常に強い権限を持っているし、それこそ反抗的な生徒を教室から追い出すことも可能である。

そんな毎日を送り中々ロシア語を聞き取れなかった私は、あることに気が付いた。
日本で留学関係の人たちに良く聞かされた「ロシアに行けば何とかなる」は、嘘だったと。
「ロシア語の聞き取り能力」は前述の日記で述べた通り「Аудирование(アウジラバーニエ)」の訓練をすることで、自分の能力を向上させることが出来る。
恐らく、全ての外国語はこのАудированиеを行う事で、聞き取り能力を向上させることが可能と、私は推測した。

そしてYoutubeで「第2言語習得理論」の専門家らの発信内容をよく見るようにした。
私は複数の専門家が発信する数々の理論、最先端の研究結果を見て、私はАудированиеの訓練方法を知った。

2)Аудированиеの教本を教えてもらう

早速、私は先生にАудированиеの教本を教えてもらうことにした。
前述のソフィア先生は「知らない」と言ったきりだったので、他の先生に聞いてみることにした。

当初、他の先生らも「よく知らない」と言っていた。
それは、その学校ではАудированиеの専門的教育は行っていないことを意味する。
そしてそれは常識だった。

なぜなら極東連邦大学はロシアの国立大学であり、大人が勉強しに来る学校だからである。
反対にАудированиеは初等教育、つまり小学校で学ぶ内容だったのである。

しかし、私は先生らの返答に疑問を抱いていた。
連邦大学のロシア語言語文化センターで働く先生らは、最低でも言語学の修士課程を修了し、修士号以上の学位を持つ人達だけが採用される最低条件なのである。

言語学では発音は非常に重要な要素と捉えられていると、Youtubeで知ることが出来た。
人間の脳は、脳の中にない発音は自分も発音できないし覚えられないのだと。

図書館でも教本を探してみた。
すると、ある先生が「Аудированиеのオススメの教本を見つけた」と持ってきてくれた。

CEFR(ヨーロッパ言語参照枠) A2レベルと印刷された発音の教本だった。
発音の教本で既にA2レベルになるとは、やはりとても重要な要素らしい。

私はとにかく早くロシア語を憶えたい、焦る気持ちを横に置いて、Аудированиеの訓練を毎日最低1時間は行う事にした。

3)スマートフォンの機能をフル活用

Аудированиеの訓練は非常にシンプルなものだった。
物凄く大量のロシア語の発音を聴いて、自分も発音を真似する。

そこで教科書に付属したCDから、音源をスマートホンにコピーした。
そこで気が付いた。
自分はイヤホンを持ってきていなかった。
元々イヤホンで音楽を聴く習慣が無かったから、持ってこなかったんだと。

早速、電気屋さんに行ってみることにした。
大型のファッションモールではいろいろな家電が販売されている。
なんと、SONY製品も置いてあった。
私は音楽機材ならSONYを買うと決めていることもあり、早速買う事にした。

私が持っているモトローラ製のスマートフォンは、Bluetooth接続機能を持っている。
SONY製のヘッドホンもBluetooth接続できるモデルを購入した。

学生寮に帰り、ヘッドホンを繋いでみることにした。
初めて、スマートフォンに入れた音源を、ヘッドフォンで聞いてみる。
聞こえてくる。ロシア語の発音が。
私はヘッドフォンを使えるようになったのが嬉しくなり、それ以降もほとんどの時間、ヘッドフォンでラジオや音楽を聴くようにしていた。

そんな具合で、私は授業後に毎日カフェに行き、ロシア語の発音を聞く時間を取ることにした。
それがキッカケで、カフェの店員さん達と仲良くなり、ロシア人とロシア語で会話をする機会が増えた事が、その後のロシア語会話のハードルを下げることに繋がっていった。